第146回「 産学官交流 」講演会(静岡理工科大学)
報告
静岡理工科大学様にご協力いただき、第146回の講演会を開催しました。
今年度の3回目産学官交流講演会は静岡市産学交流センター(B-nest)を会場として開催いたしました。今回は静岡理工科大学 情報学部 コンピュータシステム学科 准教授 高野敏明氏による「個人で取り組む小規模なAIシステム開発について」、同教授 櫻井将人氏による「視覚・色彩の不思議からICTを利用してモノ作りを考える」の講演がありました。
静岡理工科大学 情報学部 コンピュータシステム学科 准教授 高野 敏明氏
『個人で取り組む小規模なAIシステム開発について』
高野准教授の研究室では「AIを使って身の周りが少し楽しくなるシステム開発を推奨」している。過去、機械学習により顔写真から年齢を答えてくれるサイトを運営(現在ではリンク切れ)。自身の写真で写真の条件を変えることにより23歳から33歳までの幅があり、又、女性として判断することもあった。そのため、今回の講演ではAI開発の問題点、研究室ではどのように開発しているのか?の講演となった。AIを利用するためにはコンピュータのCPUとメモリ、GPU、データが必要。大学では入学時にパソコンを購入してもらうが学校の基準では少し物足りない。研究室の学生は学生の趣味嗜好でテーマを決めている。3年生は文献調査とプレゼンテーション技法、PC組立と好きなものを何か作る。4年生では文献調査とプレゼンテーション技法の他システム開発と卒論執筆を実施している。データ量としては、顔認識で45万件、物体認識18.5万件、Xでの感情分析では数万件、機械翻訳では400万件、チャットボットでは20万の質問にたいして200万件の応答が必要。尚、必要データ量には正解がなく、やってみて確認する。追加データを学習することで良い結果を得るファインチューニングと移転学習がある。AIを使うためには向く仕事と向かいない仕事があり責任を求めるのは難しい。将来的には事務仕事が楽になり、定時前に仕事が終わるようになるだろう。とりあえずやってみるから始めよう。
静岡理工科大学 情報学部 コンピュータシステム学科 教授 櫻井 将人氏
『視覚・色彩の不思議からICTを利用してモノ作りを考える』
高野先生及び櫻井先生は来年4月に開校する静岡駅前キャンパスで研究活動をすることになっている。11階が研究室となる。櫻井教授のこれまでの研究は色彩工学で、人は大部分の情報を視覚により取得しており、モノ作りの設計デザインにおいて重要な役割を担っている。視覚現象としては明るさ対比、色対比、残効があり、見方が変化する。色によって美味しく見えたりするため視覚の理解が深まれば面白いモノもできる?色には味覚的な印象があり、パッケージデザインに応用している。赤は甘そう、黒は苦そうが一般的。実験結果でも甘味、酸味、苦味、塩味、旨味が解れる結果となった(色相)。又、商品袋の色による商品や店舗のイメージが決まる実験も実施。印象に残る色、袋の色による使用意欲の高低、季節感の評価もできた。季節やイベントに応じて変更させた商品袋の採用が期待される。その他の研究としてはVR空間での視覚刺激がある。VRと実物双方で印象評価に同様な傾向が得られたことにより、試作評価に積極的に活用が可能であると考えられる。現在・今後の研究では情報工学的な視点に立ち、「人に役立つ」「面白い」「感動的な」モノ作りを目指す。機械学習でパッケージ画像を学習し、味覚的な印象を出力するツールを研究する。視覚だけでなく、人間の五感による知覚・認知及び感性的な理解が深まれば、おもしろいモノができるはず。