第147回「 産学官交流 」講演会(静岡大学)報告
静岡大学様にご協力いただき、第147回の講演会を開催しました。
今年度の4回目産学官交流講演会は静岡大学 情報学部 情報科学科 准教授 山本泰生氏による「時系列データを扱うデータマイニングと機能学習の応用可能性を考える」と理学部 化学科 教授 加藤知香氏による「白金ナノ構造を強度化する~水素の製造・利用へむけた触媒の開発~」の講演がありました。
静岡大学 情報学部 情報科学科 准教授 山本泰生氏
『時系列データを扱うデータマイニングと機能学習の応用可能性を考える』
山本准教授は人工知能、データマイニング、ビッグデータ処理が主な研究テーマ。基礎研究としてのストリームデータ処理は2025年の経済効果予測として270~620兆円と言われており、ヘルスケア、製造が大きな分野となっている。又、基礎研究としてのデータ要約はインメモリ処理を可能とする革新的なデータ管理技術であり、気象データを基に質問(クエリ)に対する回答を導く例を説明した。応用研究としてはスマートファクトリーを目指した作業行動分析をヤマハ発動機と共同研究。動画やモーションセンサー(加速度、角速度)、音声を利用して作業データの収集管理をして多元的行動分析を実施、作業標準化と作業保証に応用する。頭に加速度センサを取り付けた実験により熟練過程の見える化をする為、100回の作業を実施、データを取ることで作業の分析ができた。応用としてカムシャフト工程ラインにおける行程飛ばし防止が可能となる。又、抄紙工程に発生するカンバス汚れの欠点発生の予測を行う産学共同研究を実施して改善につながった。
静岡大学 理学部 化学科 教授 加藤 知香氏
『白金ナノ構造を強度化する~水素の製造・利用へ向けた触媒の開発~』
水素の製造、利用に向け金属を使用する場合にできるだけ金属を少量で長く持たす技術を開発したいとのことで研究に取り組んでいる。どうしたら白金(金属)を長く持たせるかというとポリオキソメタレートを利用して白金を強くする。金属酸化物でありながら分子性を保っているものをポリオキソメタレートと呼んでいる。酸化物の粉は水に解けないがこれは解ける(イオン状態にバラバラになる)、バラバラになると分子レベル、イオンレベルで他のものと複合化することができる。解けるという物性は非常に重要で安定性がある。熱とか光、特に耐熱性に優れている。又、硝酸や硫酸よりも強い酸であり固体状態で強酸性(個体超強酸)と呼ばれている。現在の研究ではポリオキソメタレートの分子骨格構造を改造することに注力している。白金触媒は様々に利用されており、燃料電池や光触媒への応用が検討されている。白金のナノ粒子に何らかのものを載せるとどんどん大きくなってしまい、又、表面の白金分子が少なくなってしまう。燃料電池では大きな問題となってしまう。そのため、欠損型ポリオキソメタレートに化合物を合成して白金が表面に露出しているsurFace- structureができ、水溶液中で安定し、合成が簡単なものができる。又、焼成することで白金の光触媒活性が向上する。尚、焼成時間による活性低下は観測されていない。基本骨格構造を持つポリオキソメタレートでは発現しない新たな機能を有する新分子の開発に成功した。今後は厳しい状況下でも持続的な水素製造を可能にする光触媒の開発、燃料電池電極触媒などへの応用を考えている。