第149回「 産学官交流 」講演会(静岡農業高校)報告 

 

 

主催:静岡市清水産業・情報プラザ(指定管理者: 静岡商工会議所)

共催:新産業開発振興機構、静岡県農業高等学校校長会 


第149回産学官交流講演会は静岡県立静岡農業高等学校のご協力をいただき、静岡県立富岳館高等学校 SDGs特産物研究班による「SDGsから見る、人も自然も豊かな街 ~地域に根ざした持続可能な農業~」、株式会社季咲亭 代表取締役 小泉幸雄氏の「国産の魅力を地域で生み出す」、静岡大学 学術院 農業領域附属地域フィールド科学教育研究センター 教授 稲垣栄洋氏の「静大ザッソーケンの挑戦 ~雑草に学ぶ成功戦略と雑草をめぐる実用化研究~」の発表、講演があった。

 

 

静岡県立富岳館高等学校 SDGs特産物研究班

『 SDGsから見る、人も自然も豊かな街 ~地域に根ざした持続可能な農業~ 』 

                                

2030年のこれからの富士宮として発表する。なぜ2030年かというとSDGsとしての達成年であるから。高校生として挑戦できることを考えた。農業とSDGsを考えたとき、「食料を安定的に供給する」と「飢餓をゼロに」、「環境問題を解決する」と「つくる責任つかう責任」が当てはまる。富士宮は日本一の高低差、富士山由来の湧き水、火山灰土壌の恩恵を受け様々な農産物がある。地域の黒ボク土の土壌診断ではEC値が低いことが解り、窒素分が少ないことより根粒菌が形成され、落花生、さつまいもに適している。JAのヒアリングでは農家人口と産出額は減少しており、よって地域特産物をPRすることが重要と考え、小学校への出前授業を行い、情報発信している。又、生産量日本一のニジマスの残滓が大量に産業廃棄物として廃棄されていることが解る。SDGsの「つくる責任つかう責任」から企業と連携して残滓を利用したエコ堆肥(マスマス元肥)を提案、商品化。落花生とさつまいもでこの肥料を使用した実験を実施。落花生では収量が牛糞堆肥より4%増、無肥料より40%増となる。さつまいもではクラック数が減少、糖度が増加し、効果があることが判明した。又、企業と連携して特産物の商品開発を実施。落花生の皮をパルプ化して漉き紙(しおり)作成、さつまいもはスイーツとパンを製造、販売するための富岳館高校朝市を企画、多くの方々に情報発信することができた。今後SDGsの考えに沿った活動をして富岳館高校が地域を繋ぐセンターの役割をしていければと考えている。そして「人も自然も豊かな街の実現を目指します」

 

 

 

 

株式会社季咲亭 代表取締役 小泉 幸雄氏

『 国産の魅力を地域で生み出す 』

 

平成19年に創業。そのころは地産地消がブームとなっていた。浅漬けをスーパーに卸していたが、スーパーから常温で保存できる漬物が欲しいとリクエストされ「こうのもの」という商品を開発。「こうのもの」商品は静岡県産の野菜、お酢、出汁を使い製造、地産地消の商品となっている。掛川産の摘果メロンは摘果後廃棄されているという地域課題があった。それをメロン漬けとして製造販売した。2022年の台風15号による竹林の土砂崩れがあった。又、2014年には興津・由比間で土砂崩れがありJRと国道1号線が寸断された。これらは竹害であり、その原因は農業の後継者不足(お茶、みかん畑が管理されなくなり竹林となる)であり、これを地域課題として認識、解決策として竹をとってメンマにしようと考えた。ゴールデンウイーク時に竹未満、タケノコ以上の1~2mの幼竹をとりメンマに加工、販売し放置竹林の課題解決をしている。国産メンマが売れるか売れないかわからなかった為、日本政策金融公庫の消費者動向調査から売れることを見つけ、高価ではあるが国産と言うことで売れると判断して2020年に発売。2020年に2トン、昨年は3トンのメンマを製造している。地域課題解決のための取り組みを提案し、地域と企業が連携して農村再生の可能性を追求している。又、小学生の会社見学、静大、県大、常葉大との産学連携を通じてシビックプライドの醸成に繋がればと思っている。国産の魅力を地域で生み出し、地域課題を周知して自分自身が関わって地域を良くしていこうと活動している。今後も活動を継続することで竹害が減ることを信じている。

 

 

 

 

 

静岡大学 学術院 農業領域附属地域フィールド科学教育研究センター 教授 稲垣  栄洋氏

『 静大ザッソーケンの挑戦 ~雑草に学ぶ成功戦略と雑草をめぐる実用化研究~ 』 

 

雑草の成功戦略について話をしますが、企業の戦略にも通じることがあると思う。「雑草は強い」は間違い。「雑草とは弱い植物である」。雑草は強く見せているのが雑草のポイント。自分の強さを発揮できるところに生えているのが雑草。耕せる場所には耕すのに強い雑草が生え、草取りする場所には草取りに強い雑草が生えている。道端の踏まれるのに強い場所には踏まれるのに強い雑草が生えている。「雑草は踏まれても踏まれても立ち上がる」も間違い。花を咲かせて種を作ることが目的なので立ち上がる必要はなく、踏まれたらどうしたら種を付けることができるかを考えている。「何が大事かを絶対に見失わない」が本当の雑草魂である。環境が変化する時代になると、早く成長して種を付ける方が強いことになる。人間が出現することにより、環境の変化が著しくなる。予測不能なその変化に対応してきたのが草である。よって雑草は特殊な環境の中で、特殊な進化を遂げた特殊な植物である。特殊な環境は予測不能な変化であり、次々に逆境が襲ってくる環境である。よって、この環境を生き抜いてきた雑草の戦略は参考になり、チャンスでもある。雑草に学ぶ実用化研究としては雑草の研究には3つあり、生理生態の解明、雑草の防除・管理、雑草の利用法の開発がある。雑草は草刈りをするほど増える。草刈りに強い雑草はイネ科の雑草。イネ科の雑草は害虫の住処・発生源となる。5cmくらいの高さで刈るのが対策になる。みんなが通るところには踏まれるのに強い雑草が生えて増える。防除(なくそうとする)と雑草はなくならないよう反発するので、管理すること(マネージメント)することが良い。四国山地では茄子を栽培するのにはイタドリが良いとされている。イタドリを使うと連作できる。糖度が上がり、皮が柔らかくなる効果がある。昔から言われていることは科学的にも合理性があることが解った。雑草にはいろいろな特徴がある。例えば小さくても花が咲く為、テーブルリリーの開発に繋がる。雑草の定義は「邪魔者」。アメリカのエマーソンは「雑草とは未だその価値を見出されていない植物である」と。雑草の知られていない価値を今後も研究していきたい。

 

 

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