第153回「 移動産学官交流 」講演会

 

(静岡大学)報告 

 

 

主催:静岡市清水産業・情報プラザ(指定管理者: 静岡商工会議所)

共催:新産業開発振興機構

協力:浜松科学技術研究振興会、静岡商工会議所製造業部会 


今年度4回目の産学官交流講演会は移動産学官交流講演会として、浜松科学技術研究振興会の協力のもと、静岡大学 浜松キャンパス 高柳記念未来技術創造館にて実施。情報学部 情報学科 助教 加瀬裕貴氏による『複合現実(Mixed Reality)を活用した不可視光情報の3D空間表現』と工学部 電子物質科学科 教授 井上翼氏による『カーボンナノチューブの革新技術と産業応用 ~未来の製造業を支える最先端研究~』の講演があった。講演会後交流会(名刺交換会)を実施した。尚、講演会前の時間に次世代自動車センター浜松(浜松商工会議所内)を見学、望月センター長からセンターの概要説明があり、その後ベンチマークルームを視察した。


 

 

1.次世代自動車センター浜松 視察


次世代自動車センター浜松は2012年に浜松市、静岡県、企業の出資(基金)で浜松地域イノベーション推進機構が設立された後、2018年にスズキ、ヤマハ発動機が中心となり設立。その後部品メーカーの技術コーディネータ計12名で現在運営している。設立の目的は「次世代自動車の時代に生き残るための中小企業支援」、エンジン部品を製造している中小企業が継続的に供給できるようビジネスを獲得する。エンジンが無くなってもモーター部品には金属加工部品が多くある。会員企業は2024年3月現在530社となっており、多くは静岡県内企業であるが34%が県外企業。又、製造業系が84.2%あり、鋳造・鍛造、金型・機械加工、プレス加工が56%占めている。センターの支援事業としては、次世代自動車対応支援(固有技術探索活動、車両分解活動、部品ベンチマーク活動、技術動向講演会・基礎講座の開催等)、カーボンニュートラル対応支援(講演会・事例報告等)、デジタルものづくり対応支援(3Dプリンタ実用化、サイバーセキュリティ対策、デジタル人材ワークショップ、静岡大学インターンシップ事業など)、又、サプライチェーン基板強化支援事業がある。以上望月英二センター長(スズキからの出向)からの説明があった。その後、浜松商工会議所1階にあるベンチマークルームを視察。このベンチマークルームは会員企業のみに公開している。

ベンチマークルームでは電気自動車のエンジン部分である駆動部分(パワートレイン)を分解展示している。33社の展示があり、すべて分解されており、写真撮影、重量計測のための作業スペース、部品寸法測定用の3Dスキャナーの導入、調査・分析用の部品の貸し出しも行っている。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.『 複合現実(Mixed Reality)を活用した不可視光情報の3D空間表現 』 

                                                                             静岡理工科大学 情報学部 情報学科 助教 加瀬裕貴氏

 

加瀬助教は不可視光による不可視の物体の検査X線CTにて撮像されたデータを仮想現実(VR)・拡張現実(AR)・複合現実(MR)を使用して表現する研究をしている。X線CTによる検査は様々な分野で使用されており医療分野においては人体内部の損傷や腫瘍の大きさを判断したり、感染症の診断に使われており、近年では複数の異なるエネルギー帯によるX線を取得して撮影を行うスペクトラル X線CTが注目されている。現在、羽田空港に導入されている手荷物検査の機械はカバンに入れたパソコンを取り出すことなしに、パソコンであることが識別できるようになっているとのこと、3次元での測定が可能となったため。構想段階ではあるが、複合現実(MR)を使用した内部構造の空間表現を求め、SONYの協力で視覚認識センサにより、左右の目の位置を水平、垂直、奥行き方向にリアルタイムに検出が可能となり、三次元映像の表現が実現した。その結果モーションキャプチャーを組み合わせ画像解析により、3次元空間における位置を特定することが可能となった。又、仮想上の対象物を手のジェスチャーにより回転・移動することができるようになった。よって人の目には見えないものの内部構造把握、表現が可能となった。

 


 

 

 

3.『カーボンナノチューブの革新技術と産業応用 ~未来の製造業を支える最先端研究~』

                                                                                                               静岡大学 工学部 電子物質科学科 教授 井上翼氏

 

井上翼教授は1997年から金属・半導体ナノ粒子分散薄膜の電子輸送現象に関する研究をして、2007年からカーボンナノチューブ(CNT)の実用化を目指した研究をしている。CNTの材料特性が優れていることは広く知られているが、それをどのように産業に結び付けるかが大きな課題となっている。炭素は軽量の素材で、原子の並び方の違いにより黒鉛とダイヤモンドに分けられる。CNTは黒鉛の仲間で、炭素原子が六角形に配置された1層のグラファイトシートを筒状に巻いた炭素原子のみで構成されるチューブである。CNTは「軽量、地上最高強度」と言われ、宇宙エレベータロープとして期待されている。テザー(ロープ)として要求される素材は静止衛星軌道が36,000Kmで遠心力と重力がつり合い24時間で1周するため、静止衛星と地上をつなぐもの。自重に耐えうる強度を有する物質のみがデザーとして要求される。CNTの強度は実験結果として65~80GPaとされ、引張強度は1.4GPa(CNT直径11nm)となった。実際に使えるかどうかの実験では国際宇宙ステーション(ISS)にて2年間曝露実験し、原子状酸素により鋭利に削り取られることが判明した。しかし、無欠陥のCNTで36,000Kmのテザーを作れたら、理論的にはぎりぎり使用可能となった。CNTはひずみセンサの応用、電磁波シールドフィルムへの応用が考えられる。尚、CNTはA3サイズのシートで40万円ほどの価格になるとのこと。井上教授はCNTの研究開発、販売を目的に浜松カーボ二クス株式会社を設立している。

 

 


                                                                                                 

『  交流会(名刺交換会) 』

講演会会場である高柳記念未来技術創造館にて実施。

 

                                                                                       

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