第164回「 産学官交流 」講演会(静岡理工科大学)
報告
静岡理工科大学にご協力いただき、第164回の講演会を開催しました。
今年度の4回目産学官交流講演会は静岡市産学交流センター(B-nest)を会場として開催いたしました。今回は静岡理工科大学 理工学部 理工学科 特任教授 エアモビリティ研究所 所長 佐藤彰氏による「次世代エアモビリティ(ドローン・空飛ぶクルマ)の現状と今後の展開」、同建築・都市デザイン学部 建築・都市デザイン学科 教授 環境・災害科学研究所 所長 中澤 博志 氏による「環境・災害科学研究所の立ち上げと地域の防災」の講演がありました。
静岡理工科大学 理工学部 理工学科 特任教授 エアモビリティ研究所 所長 佐藤 彰 氏
『次世代エアモビリティ(ドローン・空飛ぶクルマ)の現状と今後の展開』
佐藤特任教授はヤマハ発動機でヘリコプタの開発に従事し、その後静岡理工科大学のエアモビリティ研究所の所長となっている。技術の進歩や国内外の開発動向、社会実装に向けた課題について説明があった。
次世代エアモビリティとは、ドローンや空飛ぶクルマを活用した新しい航空輸送システムであり、物流、観光、防災、医療など幅広い分野での活用が期待されている。特にドローンは、スマートフォンにも使われているセンサーやGPS、姿勢制御技術の進歩によって飛行の安定性と操作性が大きく向上し、農業、物流、点検などの産業分野で利用が拡大している。一方、世界市場では中国メーカーが大きなシェアを占めており、重要部品の安定調達や国内産業の競争力確保が課題となっている。また、有人地帯での目視外飛行を可能とするレベル4飛行の実現に向け、機体認証や操縦ライセンスなどの制度整備も進められている。
空飛ぶクルマについては、電動化や垂直離着陸技術を特徴とし、ヘリコプターと比較して騒音や運用コストなどの課題を解決し、より手軽な空の移動手段となることが期待されている。国内外の企業が開発を進めており、日本でもスカイドライブ社などが実用化に向けた取り組みを進めている。しかし、実用化には機体の安全性認証、開発資金の確保、バッテリーの性能向上、運航管理体制の構築など、多くの課題が残されている。大阪・関西万博を一つの契機として期待されたものの、本格的な普及にはなお時間を要するとの見解が示された。
静岡県では、次世代エアモビリティの先進導入地域を目指し、行政、企業、大学が連携した「オール静岡」の取り組みを推進している。静岡理工科大学においてもエアモビリティ研究所を設立し、県内企業との共同研究や実証フィールドの運営など、社会実装に向けた活動を進めている。ウクライナなどの戦場におけるドローンの活用事例も紹介され、技術の進歩が社会や産業だけでなく、安全保障にも大きな影響を与えていることが示された。
今回の講演を通じて、次世代エアモビリティは単なる移動手段の進化にとどまらず、地域産業の振興や社会課題の解決につながる可能性を持つ一方、安全性や制度、技術面での課題解決と産学官の連携が重要であることを理解した。

静岡理工科大学 建築・都市デザイン学部 建築・都市デザイン学科 教授 環境・災害科学研究所 所長 中澤 博志 氏
『環境・災害科学研究所の立ち上げと地域の防災』
中澤教授は東京理科大学大学院を卒業後、建設コンサルタント会社を経て2021年より静岡理工科大学に着任。2026年から学部長、環境・災害科学研究所所長に就任。研究所の設立目的や活動方針、地域の防災力向上に向けた研究内容について講演があった。
近年、地球温暖化等の影響による気候変動に伴い、豪雨や土砂災害などの自然災害が激甚化・頻発化している。また、南海トラフ地震などの大規模地震への備えも重要となっており、行政や企業による対策だけでなく、地域住民を含めた社会全体で防災・減災に取り組む必要性が高まっている。
こうした状況を踏まえ、静岡理工科大学では先端融合研究所の一つとして環境・災害科学研究所を立ち上げた。同研究所は、土木工学、地盤工学、環境工学、情報工学、国土計画など、異なる専門分野の研究を融合し、環境変動や自然災害に関する科学的知見を地域社会に還元することを目的としている。主な活動の柱として、①分野横断的な先端研究、②学生や地域住民に対する防災教育支援、③自治体・企業等との地域連携の三つを掲げている。
具体的な研究事例として、南海トラフ地震発生時の液状化と津波による複合災害への対応が紹介された。地震による道路の段差や液状化した地盤が避難行動に及ぼす影響について、実験やシミュレーションによる検証を進めている。また、橋梁の被災状況を想定した解析や、道路に段差が生じた場合でも車両の通行を確保するための対策技術の研究も行われている。さらに、高齢者や要介護者など、避難に支援を必要とする人々の移動条件を考慮した避難シミュレーションにも取り組んでいる。
このほか、城郭などの文化財や老朽化したインフラにセンサーを設置し、変位や異常を継続的に監視するモニタリング技術についても紹介された。異常の兆候を早期に把握し、管理者に情報を伝達することで、被害の未然防止につなげる取り組みである。今後は、大学の研究成果を地域の防災対策に活用するとともに、自治体、企業、地域住民との連携を強化し、研究・教育・地域連携を一体的に推進する方針である。将来的には、地域の課題や相談に対応し、科学的データに基づく防災・減災対策を提案できる研究拠点を目指している。
